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新商品:東山魁夷『白馬の森』

 日頃、東京書芸館をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。今回は文化勲章受章作家にして、逝去後、勲一等瑞宝章を授与された昭和の国民画家・東山魁夷の代表作『白馬の森』をお届けします。本作は人間の視覚に極めて近い色彩を再現する最新の工芸技法によって制作。シリーズ「白馬の見える風景」の中で最も人気が高く、富士山五合目の深い森に華麗に佇む平和と清浄の象徴・白馬が心に迫ります。他社様よりいち早く弊社が先行販売を行うこの好機にご所蔵ください。
 
 東山ブルーの幻想的な森に躍り出た一頭の白馬。どこからやって来て、どこへ行こうとしているのでしょうか。あたりの気配を窺うような姿を見ていると、まるでピアノの独奏とともに時の流れを演出しているような錯覚を覚えます。富士山五合目を題材に描かれた『白馬の森』は東山魁夷が若かりし日、留学生活を送り、戦争のため帰国を余儀なくされた北ドイツやオーストリアへの思いが強く投影された作品として広く知られます。というのも、当時からこの地は無数の針葉樹が生い茂る「天地の境」「天狗の庭」とも称される秘境。実際に奥へと足を踏み入れ、神秘の光景を目の前にして写生することは難しかったと想像されます。そのため、前年、36年ぶりに旅した思い出の土地の印象がキャンバスに自然と現れたのでしょう。何より、人物がほとんど登場しない東山作品にあって、この作品には大きな特徴があります。主人公の白馬が一連の「白馬の見える風景」の中で最も大きく描かれている点は見逃せません。
 
 「留学時代、第二次世界大戦へと世相が傾いていく中、絵を描き続けられるのかどうか、不安に揺れ、白馬をしきりに描いた経験がある。彼の存在は私の分身であり、描き続けられる喜びの表現なのだろう」
 
 自然を愛で、澄んだ空気を満喫しながら画に没頭する何事にも代えられない幸福感。心に住む清浄の象徴が圧倒的な存在感を放つ不朽の名作は、光と影の魔術師と崇敬の念を集める昭和の国民画家が原点に立ち戻り、平和な世と汚れなき自然のありがたさを綴った人生の物語に違いありません。
 
 現在、富士山五合目は整備され、晴れていれば眼下に山中湖、富士吉田市、河口湖を一望できる一大観光地です。その様子は東山魁夷が本作を描いた当時とは趣を変えてしまっています。私は決してこれを否定しません。しかし、本作に表現されているような自然の偉大さと神秘性を感じることはもう難しいでしょう。だからこそ、発表から45年が経った今も幽玄なこの作品は私たちの心に響くに違いありません。
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