井堂雅夫(商品数:32件)
井堂雅夫は京都の美に魅せられ「かけがえのない日本美と伝統芸術である木版画を次世代に繋げたい」との想いを胸に、描くことに人生を捧げてきました。
ここ数年の闘病生活でも、病室に画材を持ち込んでは絵を描き、最後の最後まで筆を執っていましたが、平成28年4月23日、70年の天寿を全うし永眠しました。
長年ご縁のある東京書芸館のお客様には、父も新作発表の場として意気込んで制作に励んでいました。井堂雅夫が歩んだ創作の道、絵が大好きだった父の作品を皆様の心に留め、一枚でも多く愛していただければ幸いです。
井堂雅之(井堂雅夫画伯のご子息)
井堂画伯が情熱を注ぎ、守り伝えて来た《手彫り・手摺り木版画》
木版画の歴史は古く、平安時代にまで遡ります。江戸時代には多色摺りの優美な「浮世絵」として一大文化を席巻。葛飾北斎、歌川広重ら天才絵師の作品は世界を驚愕させ、芸術文化に多大な影響を与えました。
木版画の制作は「完全分業制」。古来、受け継がれる「伝統木版画」は「下絵」「彫り」「摺り」の工程を、その道の極意を体得した一流の職人が担当します。それぞれの熟練職人が三位一体となることで、はじめて完成度の高い作品が生まれるのです。
井堂雅夫画伯は木版画制作の際、絵師にあたります。「絵師」とは作者のこと。構図から描写、色彩まで作品のすべてを決定づけます。そして、下絵を元に版木を彫り上げる「彫師」。顔料を調合し、紙面に幾度も摺り上げる「摺師」。色や摺りの具合など厳しい審査を経てようやく完成されます。常に緊張と隣り合わせの上、非常に手間のかかる木版画ですが、それだけに他では味わえない唯一無二の芸術性を誇ります。
木版画は印刷物とは違い、制作数に限りがあって、無限に手に入るものではありません。版木は摺りを重ねるたび磨耗して品質が落ち、最終的には処分されてしまうからです。一切の妥協を許さない職人は納得のいく作品だけを世に出すために、制作数を限定し魂を込めて仕上げていきます。井堂画伯は、伝統的な木版画文化を継承する稀有な巨星であっただけに、今回のことはたいへん悔やまれてなりません。今後、井堂作品をこれまでのように頒布できる機会は限られていますので、ご入手できる今のうちにご所蔵ください。